ジュンタロウは優しくてマメだと前にも書いたが、奴の甘さは本当にやばい。
女子のオタクの何割がそうかはわからないが私はお腐りネタの方も十分嗜んでいる。
男女の恋愛沙汰よりジャンルとしてのBLに触れる機会の方が圧倒的に多い。
その中で「今まで付き合ってなかったけど、明確に恋人同士になった途端に攻めのゲロ甘っぷりが扱いがやべえ!!」と受けが狼狽える描写のある漫画があった。
確かに友達以上恋人未満の段階からある程度の甘さは漂うし、付き合うとなれば途端にそのレベルは跳ね上がるのは身をもって知っている。
その認識を持ってなお、しかも付き合いもしていないのに「やべえ!!」とビビらせてくる奴がいる。
ジュンタロウである。
奴の甘さはなかなかにすごいレベルだと思う。もはやお姫様扱いに近いとすら感じる。
こちとら四十路前やぞ?と言いたい。
いや、やめないでほしいとは思っている。正直満更でもない、断じて。
私は一時「もう1人で生きていく」と心に決め、昇給試験的なものは全部受けるし仕事は絶対に断らないしマンションも買うしでとにかく「どこからどう見ても完璧な女」としての自分を作り始めていて、おそらく実現したと思う。
そうなると職場では周りが全員ライバルであり顧客であり、要するに味方が少ない状態に陥りがちだ。
会社は私の仕事を増やすエネミーだし、上司は私の成長を促すため試練を与えまくる猛獣使いなのだ。
社会的に大切にされたという自負はあるが、人としてどうなのかというと怪しいのが私である。
なにより、人生を振り返って見てもいわゆる「女性扱い」はほぼされたことがない。
いじめっ子に「ブス!」と言われ過ごした子供時代、スポーツに染まりまくる青春時代、男女で仕事の分け隔て一切皆無のブラック企業時代と、なかなかである。
そんな中でジュンタロウはやばかった。
まず、絆創膏でも貼ろうものならどの位置でも気付いて「どうしたん?痛い?」と撫でながら聞いてくる。
初めてそれを目の当たりにしたときは「さ…逆剥けですね…」と思わず敬語で返した。
よりによって逆剥け……恥ずかしい。女性らしい繊細な手を維持するためにもハンドクリームを使いまくらねばならない…
アレルギー体質で蕁麻疹をよく出しているのだがそこについてもものすごく心配をされるし、頭痛持ちの「はは、慣れたもんですよ」というよくある頭痛に関しても心配の仕方がすごい。
もうひたすらにやべえ!!!!と驚き慄いている。
これを受けるとやはり「前のあれは脈なしだったな…」と謎の認識を強めるわけだが、男ってこんなに甘いの?という疑問もすごい。
男性側にも「女性ってこんなに◯◯なの?」というなにか疑問があるだろうが、今の私が抱くのはひたすらにこれだ。
甘くて胸焼け目前だが人生でほぼ初めてレベル、しかも他の誰でもないジュンタロウが、さらに「私」にこれなのだ。
生きててよかった……を噛み締める。
私は笑いの沸点が低いのだが、仕事はさっき書いた通りだし普段あまり人とつるむことがないので自分の笑い声をあまり聞かない。
しかしジュンタロウと話すと途端に大笑いしてしまい、オラウータンか何かがするような「手を叩いて大口を開いて爆笑」とかいうことをしてしまう。
とにかく品性がない、うるさい、下品だ……と感じてしまいひたすらに恥ずかしい。
しかし止められるものでもなくかなり困っている。
こればかりはしょうがないと思いたい、いややっぱりただただ恥ずかしい。
あんまりに繰り返すのでもう諦めて「もうやだあオラウータンみたいな笑い方しちゃうーー品がないーー」と泣きついたことがある。
というか普段から泣きつきまくっている。
最近、それに対しての奴の返事はこうだ。
「それが見たいから話す」
……甘過ぎる…オラウータンもびっくりである。