私は自分のルックスが嫌いだ。
丸顔、低身長、胸だけは大きくてほかは小さく、撫で肩、痩せるときは下半身から……とにかくバランスが悪い。
写真映りに関しても、当たり角度というものがまったくない。
確かに「いや…そんなの遥か昔の中学生の悪口でしょ」と言われたらそれまでなのだが、本気でブスに見えるのだからしょうがない。
過去コスプレにハマっていたが、あれは良かった。
私が私でなくなる時間というのは快感でしかなかったし、顔というより撮影技術や構図のつくり方、衣装作りや武器の造形、名刺や写真をはじめとする平面デザイン的なものといったもので声を掛けてくれる人が多かったのだ。
顔だって、普段のメイクの五倍は濃かったしキャラに寄せたから原型はなかった。
胸はサラシで潰し、ぺったんことまではいかないがAカップ程度にまで小さくしていた。
この影響のおかげか、今の仕事は写真に写ったり動画の被写体になったりする機会が多いもののレンズという存在に対してはあまり抵抗がない。
お金をいただいている時間に発生する「作業」だし、そこに私の意思はほとんどないというのもあってまったく問題ない。
問題はジュンタロウだ。
おそらく今年の冬あたり、例の「人ごみで服の裾を掴んだが手を繋ぐにはいたらなかった」という魚市場に行った頃だったと思うが、ジュンタロウが私を写真に収めるようになった。
好物の鰻を食べているとか、ぼーっと立っているとか、雪に感動しているとかそんな場面だ。
私は家族全員が陽キャという環境出身なので(心が陰キャなのでたまに疲れているが)何かあれば基本的に顔芸付きだしリアクションが大きい。
素敵なものを目にしたら、その感動も口にする。(仕事柄、感想をアウトプットする力は鍛えてもらったからそこは本当に助かっている)
ジュンタロウの前妻は無感動なタイプだったらしいから、いちいちオーバーリアクションな私が面白いのだろう。
私はというと「男って、気に入った相手の写真撮ったりするよね」とまんざらではないのだが、撮影された写真を共有され目にすると「うっ!!!」と胸を抑えたくなる。
ブスだ…ブスすぎる……
なんでこんなにも顔が嫌いなんだろう。
厚い上半身も嫌いだ。
ジュンタロウのことはほぼ一目ぼれに近かったというのに、ゲンキンな奴だなと思う。
私は奴のルックスが好きなので、再会する前も後も写真を撮りまくっている。
奴が結婚してからも写真は消せなかった。
やっと、私のことも写真に撮ってくれるようになったと内心嬉しくてしょうがないのに自分自身が自分を好きになれないとは困ったものだと思う。
顔を見つめられたり手を繋がれたり、「そういうところが好きだ」と言ってもらったり、その都度で私はちゃんと「ありがとう」とか「嬉しい」とか
そういうことを言ったり伝えたりできている気がしないのだがここが厄介なんだろうなと思う。
以前付き合っていた別の彼氏は「僕は〇〇フェチだから、ドストライクなんだよ」と伝えてきたのだが、この自信のなさが伝わっていたのかもしれないと感じる。
〇〇に入るものは私のコンプレックスだったので、彼なりのフォローだったのだろう。
好意を受け止められない、肯定できないとはなかなか辛いものだとここにきて初めて知った。
自信を身に着けて、何を言われても「ありがとう!嬉しい!」と笑顔で返せる覚悟や度胸や決断力を向上させねばと、最近会って話した帰り道はいつも思う。
そんなことをしていたら、ジーンズのサイズがかなり変わった。
インチで言うと5段階、SMLで言うと2段階下がっている。
ダイエットをしようという気はまったくなかった。完全に恋煩いである。
ブスと言われた呪縛は恋をしている間、美容効果へのバフになるらしい。
そういう意味ではあってよかったかもしれない。
ちなみに私をブス呼ばわりしてきた男は中学時代の同級生だが、学年で一番「きもい」と言われ続けていた生徒だったように思う。
自分より弱い人間や言いやすい人間にあたっていたのだろう。
私は生まれてから今に至るまで地元を離れていない。
もし向こうも同じなら、もしかしたら再会することもあるかもしれない。
今に見ていろ、というのを胸に今日も頑張りたいと思う。