オタクのハートはもう限界だ

ねこ二匹と暮らすサッカー大好きおたく社会人の片思い※年下彼氏にクラスチェンジした!

地獄のはじまり

「限界オタク」が「年下溺愛彼氏に夢中なアラフォー」になって一か月が経とうとしている。
我ながらものすごい変化である。


少なくとも去年の今頃はこうなるだなんてまったく予想していなかったし、そもそもジュンタロウは「過去好きだった男」でしかなかった。
人生、何が起こるかわからないなあとしみじみ感じる。

 


こんな意味不明なオタク人材をジュンタロウがなぜ気に入ってくれたのは本気で謎だ。

 


しかし「ん?脈か?」と感じるイベントはちょこちょこあったな…と、去年の秋ごろを振り返ると正直思う。
都度で自己防衛から「いやいや勘違いしたらだめだ」と自分に言い聞かせていただけである。


そのイベントがいつだったかというと、一番最初に再会&サッカーを観たあのタイミング周辺である。


そう、再会してからわりと早い段階だ。

 


10年以上振りに再会してサッカー観戦をした翌週、私はたまたまジュンタロウの街に泊まりで出張で来ていたのだが、それをジュンタロウに伝えると「晩御飯でもどう」と誘ってくれたのだ。
そのとき男女の空気感は……なかったと思う。

 


地元の人が愛するという食堂に連れて行ってもらったのだが、ハヤシライスについてきた福神漬けに大喜びしたらそれに対してジュンタロウが大ウケしていたということが非常に印象深い。

これについては未だにジュンタロウがネタにしてくるので、よっぽどだったのだと思う。


ごく普通のノリで晩御飯を食べた後は「大量に梨があるから」とかいう、よくわからない理由でジュンタロウの家にお呼ばれした。


「いいよ、どうせホテル帰るだけで暇だし」と二つ返事で了承したものの、正直に言えば気が気でなかった。


だってその月の初旬まで前妻がいた家である。

※ジュンタロウは前妻が家を出るまで2か月近く実家に避難していたらしいが

 


いつ前妻が急に訪れてきてもおかしくない
家の中で前妻の気配がどう目に飛び込んでくるんだろうか
もし見つけたらそのとき自分がどうなるのか

 


まったくわからない。
とにかくひたすらに緊張していたように思う。

 


実際に着いてみると、築浅の美しい家があったのだが中は散らかり放題であったため私の心配は若干飛んだ。


私の記憶の中にあるジュンタロウの家(実家)は物が多く、整然とはしているが雑然とした……そんな「日本によくある一般家庭」の姿だったから、散らかっている状態にはあまり驚かなかった。


「よくここに友人を呼んだな」という驚きがまずナチュラルに浮かんで、そして一瞬で消えた。
謎の納得があったし、そのうえで少し「いいぞ、いいぞ」とほくそ笑むこともあったのだ。


奴は私に素を見せている。
心が安らぐ相手だと思っている。
これは私にとって、腹黒い考え方であるが都合がよかったのだ。


今だからこそ言えるが、再会して「やっぱかっこいいな」と感じた私はジュンタロウと「良い仲」になりたくてそれなりに頑張った。


再会した2023年9月から、告白された2024年4月までずっとである。

 

我ながら気が長いなと思う。

しかしそのくらい必死であった。告白された日に寝込む程度には必死であった。


ここ10年で何度か男性との交際はあったし正直に言うと私はモテたのだが、「心から好き」と思える相手はいなかったように思う。
彼らは愛情深く私を想ってくれていたし、みんなルックスも年収も悪くなかった。


しかしやはり、基準としてジュンタロウがいたのだ。
この年月を超えた再会に縁を感じないわけにはいかず、私は燃え上がっていたように思う。


その男が今、私の近くにいて根城にまで招き入れたのだ。
逃がしたくないという想いはとにかく強かった。


このときも、特に何も気にしないていで「素敵な家じゃん」と言っていたが、とにかく聞かされるまでは前妻について触れずに「私と楽しく時を過ごすこと」に集中した。


それが功を奏したのかなんなのかはわからないが、テレビも付けずジュンタロウとはひたすら喋りまくったように思う。

 

正直、何を話したのかはさっぱり覚えていないのだがダラダラと喋って梨を食べて、気付いたら夜中の1時頃であった。

 

 

「時間があっという間だ」

 


この言葉をジュンタロウは幾度となく繰り返すことになるのだが、このときが初だったように思う。


一緒にいてストレスが一切なく、時間を忘れる相手。

私は自分がそうであるよう願っていたわけだが、ここは作戦抜きで「何もしなくてもそうなった」という状態であった。

 


やっぱり好きだなあ~と思う程度に、ジュンタロウとの時間は穏やかであった。
宿泊先のホテルまで送ってもらい、このときはそれで解散となった。

 

 

「ん?脈か?」のポイントはこのあたりからだ。

翌日、仕事を終えて自分の街に帰る新幹線の中で「来月猫に会いに遊びに行く」と連絡があったのだ。

「え、来てくれるの」と思わず返したのだが奴は本気らしく、この流れに「え、なんで?……ん?(私について何か考えが変わった?)」と意識せざるを得なくなったのだ。

 


ナイスな夜を過ごしたなあと、この流れに疑問を抱きつつも内心でガッツポーズをしながら帰路についたものだった。

 

 

……というそんな中で「それはどうなんだよ」と驚いたことがあった。


時は少し戻り、ジュンタロウの家での出来事である。

 

10年以上前の友達時代、私がジュンタロウに送った手紙やお土産の送り状といったものが「俺、モノを捨てられなくてさ」という言葉とともにクローゼットから出てきたのだ。


確かにかつての私は送ったが、それは奴が当時住んでいた実家宛てだ。
この家に送った記憶は一切ない。

 

まさか…わざわざ実家から持ち出してこの家でそれらを保管していたというのだろうか

…と、いまだに疑問を抱いている。

 

前妻が「彼女」であったであろう頃、ジュンタロウはLINEがそっけないときとそうでないときのギャップがあった。
おそらく、LINE打っているその同じ空間に彼女がいるときといないときの差であろうなと思う。これは当時の私も感じていた。


おいおい大丈夫かこいつは…と当時少し心配したが、結婚報告とともにこれが一切なくなったため「既婚者モードに切り替えたんだな」と勝手に納得していた。


「家を建てるから遊びに来てくれ」と言われて、完成報告を律儀に待っていたのだがそれもなかったから「ああ、奥さんが嫉妬深いんだな」と思い、これ以降ジュンタロウが「過去の男友達」にシフトチェンジしたし私からも連絡しなかった。


とはいえだ、いろいろと重複期間がある。


最初の連絡で「結婚後は異性とやりとりはしなかった」と言っていたが、交際時代に限れば私と連絡を取っていたし、私からの遺物(?)を大事に保管していたのは結婚後も変わらずということになる。


なんだそれは…私はお前のなんなんだ……いや、家に招くための住所の控えのためだろうよとは思うけど……


というこのモヤモヤはおそらくずっと持ちっぱなしであろうなと今でも思う。
そこまで私のことを忘れられなかったのかよと、嬉しくも悔しい気持ちが否定できない。


前妻に対しては嫉妬が未だ否定できないが、こういう意味で爪痕を残していたという事実には少しだけほろ苦い感慨がある。


これが、今もたまに思い出しては「なんなんだあれ」と首をかしげるジュンタロウミステリーである。

 


こんな出来事があったのが去年の秋口なのだが、これ以降日が重なるにつれジュンタロウの言動や行動が若干変化していく。

 

私が家にお邪魔した翌々日出発したという同僚との傷心旅行の報告は都度で入ったし、写真も送り付けてきた。


さらには

「ミソノの家がキレイすぎた、触発されて掃除が習慣になってきた」
「脱衣所やトイレのマットを変えた」
「ミソノがスリッパユーザーだから買っておいた」

等々、奴が家のマイナーチェンジの報告を繰り返しまくるようになっていったのだ。


LINEに関しては毎日で話題はおはようから寝落ちまで、前妻の愚痴からなれそめネタまで……天国と地獄を行ったり来たりだ。


脈なのか独り言なのか気晴らしなのか、区別がまったくつかず「なんなんだよあいつ」と、オタクが頭を抱える半年はこうして始まった。